|
|
|
厚生労働省の「女性のライフスタイルの変化に対応した年金の在り方検討会」が
最終報告書をまとめた。報告書は「女性自身の貢献がみのり、夫婦それぞれが築
く年金制度」をめざし、「年金の支え手を増やす」視点から「共働き世帯」をモ
デルにした制度への見直しを提案している。2004年度の年金制度改革に向け、社
会保障審議会年金部会でも議論が行われているところである。
|
S男:前回からの続きだけど、(3)がちょっとわかりにくいネ。報告書にある
「働く女性の遺族年金が不利にならないようにする」って、どういう事なのかな?
R子:サラリーマンであった旦那さんが死亡した場合に、働く妻が65歳以降にも
らえる年金には、選択肢として @旦那さんの老齢厚生年金の4分の3である「遺族厚生年金」を受け取る A自分の老齢厚生年金を受け取る B旦那さんの遺族厚生年金3分の2と、自分の老齢厚生年金の半分を受け取る という3つがあるの。そしてこの中から一番金額が多いものを選ぶことが出来るよ うになっているのよ。
S男:へぇー。3つのうちから、どれか一番多いものを選べるようになっている
のか。
R子:3つある中でも、圧倒的に@を選択する人が多いわ。
S男:@を選択する人は、自分が払った保険料分については、掛け捨てと同然に
なってしまうよね。
R子:そうなの。だから今回の報告書でも、この掛け捨てを防止するにはどうす
るべきかって、検討課題にあげられているのよ。働いてちゃんと納付した保険料
が、きちんと給付に反映されるような年金制度にしなければいけないでしょ。
S男:その通りだね。以前から年金制度は、個人単位に設計されるべきじゃない
かって思ってたんだよ。
R子:個人単位に設計すると、遺族年金という考え方も必要なくなってしまうん
だけど、現状では、この不利な部分をなくす方向で検討されているわね。
S男:(3)については良くわかった。(4)の「離婚時の年金分割」っていう
のは何?
R子:これこそ、個人単位設計にかかわる話ね。今の年金制度の根幹を揺るがす
と言っても、いい過ぎでは無いくらいよ。
|
|
|
厚生労働省の「女性のライフスタイルの変化に対応した年金の在り方検討会」が
最終報告書をまとめた。報告書は「女性自身の貢献がみのり、夫婦それぞれが築
く年金制度」をめざし、「年金の支え手を増やす」視点から「共働き世帯」をモ
デルにした制度への見直しを提案。2004年度の年金制度改革に向け、1月から社
会保障審議会年金部会でこの報告書をたたき台にした議論が開始される。
|
S男:報告書では、6つの具体的項目があがっているんだってね。
R子:そう、(1)モデル世帯を共働き世帯に変更する(2)パート労働者に保険
適用拡大をする(3)働く女性の遺族年金受給額が不利にならないようにする(4)
離婚時は年金も夫婦それぞれに分割して支給されるようにする(5)育児支援策を
講ずる(6)今まで免除されていた専業主婦の保険料を徴収するのは当分の間保留
する、となっているわね。
S男:(6)の専業主婦の保険料については、「徴収する」じゃなくて「保留」?
R子:(6)は議論が集約できずに現状のままのようね。(1)から(5)の変更
が行われそうよ。
S男:そうか。じゃあきになるのは(2)(3)(4)だね。もう少し詳しく知りたいな。
R子:(2)から説明するわね。いまパートなどの短時間労働者については、一週間
の終業時間が正社員の4分3以上なら厚生年金、それ以外なら国民年金に加入し、さ
らに年収130万円未満で夫に扶養される妻であれば保険料が免除なのだけれど、雇
用者全体に占めるパート比率は21.8%にも達しているの。検討会でも「適用拡大
する方向で検討すべき」との意見が多くて、たたき台として厚生年金の労働時間基準
は「2分の1以上」とし、国民年金の被扶養者認定は「65万円」に引き下げ、どち
らを超えても第2号被保険者とする案が有力となったのね。これによると、低所得者
の負担が重くならないように標準報酬下限が現行の9万8,000円から6万円程度
に引き下げられるの。試算では、パート月収が6万円の場合、17.35%を労使折
半すると約5,000円。サラリーマンの夫を持つ主婦(第3号被保険者)は、将来
の年金増とともに新たな負担増となるけれど、自営業の夫を持つ主婦など(第1号被
保険者)は、年金額は変わらずに現行(1万3,300円)より8,000円ほど安
くなるわ。
S男:保険料免除基準を見直して、厚生年金の加入者を増やす考えなんだな。
|
|
|
R子:前回まで、年金と給料の調整の仕方を見てきたんだけど、年金は、給料のほかに
雇用保険とも調整を行うのよ。
S男:えっ?僕が退職したときは、雇用保険も年金も両方支給されたよ。調整なんてさ
れなかったよ。
R子:ええ、確かに平成10年3月31日までに受給権が発生した特別支給の老齢厚生
年金は調整されないから、まるまるダブルでもらえたんだけれど、それより後の平成10
年4月1日以降に受給権が発生した特別支給の老齢厚生年金については、雇用保険と調
整されることになっているのよ。
S男:ダブルでもらえなくなったのか。あれから仕組みが変わったんだね。
R子:そう。でも、どういう調整のされ方をすると思う?
S男:退職して特別支給の老齢厚生年金をもらう場合、雇用保険がもらえなくなるのかな?
R子:その逆なの。特別支給の老齢厚生年金がもらえなくなるの。
S男:へぇー老齢厚生年金の方が、もらえなくなっちゃうのかぁ。
R子:ちょっと待って、老齢厚生年金はもらえるのよ。”特別支給の”老齢厚生年金が、
雇用保険の給付と調整されるの。
S男:60歳台前半の老齢厚生年金だけが、調整されるんだね。
R子:そう、そこは気をつけないといけないポイントね。これは
雇用保険の失業給付だけでなく、在職している場合に支給される
高年齢雇用継続給付との調整でも同様よ。
S男:えっ何?その高年齢雇用継続給付って?
R子:「高年齢雇用継続給付」は、雇用保険から支給される給付の1つで、
国が「65歳まではなんとか現役で働いてほしい」という願いを込めて創設
したものなの。簡単に説明すると、60歳定年を過ぎても働いている人のうち、
その定年後の給料が定年前の給料よりも少なくなってしまっている人
については、この給付が支給されて定年前の給料とだいたい同じレベルまで
いくようカバーされるのよ。
S男:スゴイね、そんな給付があったんだ。
R子:この「高年齢雇用継続給付」との調整は、前回説明した給料との調整
を行った後で行うことになっているわ。
|
|
|
S男:田舎の弟に前回のあの表を見せてやったよ。「どうして年金が減るのか、よくわかった。」って。
R子:年金と給料をダブルでまるまる受け取ることが出来ると思っている人って、
まだ結構いるのよね。あの表が役に立って良かったわ。
S男:前回のあの表からいくと、65歳未満の給料が高い人については、老齢厚生年金が全くもらえない
ケースも出てくるね。
R子:ええ、全額支給停止となる場合もありうるわよ。
S男:ほんとに上手く出来てるよねぇ。でも、僕がもし今から働く場合には、
給料と年金は2つマルマルもらえるよね?もう既に65歳以上だから。
R子:えっ!あなたこれから働くつもりなの?
S男:あっ、言っちゃった。実は来年の4月から働こうかなと思って、いろいろ
当たってたんだよ。
R子:まぁ、そうだったの!たしかに今まで65歳以上の人については、
在職中であっても老齢厚生年金は支給停止されなかったんだけど、来年の4月
からは70歳までは厚生年金の被保険者となる関係から、65歳以上の人にも
在職老齢厚生年金の制度が適用されるのよ。
S男:じゃあ僕も、来年の4月からは前回のあの表のように支給停止されるわけ?
R子:ちょっと待って、65歳以上の人は、少し違うの。標準報酬月額と
老齢厚生年金月額の合計が37万円を超える場合に、その超える部分の2分の
1が支給停止となるの。でもね、これはあくまでも来年4月以降に65歳と
なった人の話だから、あなたは大丈夫よ。支給停止されることないわよ。
S男:話が、またややこしくなって来ちゃったぞ。
R子:65歳以上の支給停止額の計算のほうが、式がひとつで簡単でしょ?
S男:そうだけど、70歳までは厚生年金の被保険者でいなきゃいけなくなった
のだから、70歳までは厚生年金の保険料を払う必要が出てくるな。
R子:そうね。以前よりも寿命がだいぶ伸びてきているから、「働ける期間も
同様に伸びているはずだ」って事なのよね。
|
前のページへ戻る(←) | このページの一番上に戻る(↑) | 次のページへ進む(→) |
現在のページは<青・2ページ目> | ||
青ページのトップへ戻る |